2025.10.9(木)つるラボゼミ:秋山ゼミ② を開催しました
つるラボゼミ
レポート
指導者向けゼミ・研究会
10月9日(木)に、山梨県立図書館にて、2025年度のつるラボゼミ 第2回秋山ゼミ 子どもと大人の「ケア」と「ウェルビーイング」を開催しました。
ファシリテーターは山梨大学の秋山麻実先生。

■ 第二回 開催概要
子どもと大人の「ケア」と「ウェルビーイング」
保育理論を探索する 第1回「なぜ『声を聴く』のか」
ファシリテーター:秋山麻実先生(山梨大学)
「ケア」とは何か。「ウェルビーイング」とは何か。
耳慣れた言葉のようでありながらも、実際にどのような意味を持つのか。
「ケア」「ウェルビーイング」という言葉を丁寧に分解していきました。
そして、「声を聴く」とは言っても、何を聴けばいいのか、何のために、どんなふうに聴くのか、
聴くのは子どもの声だけかなど、聴くことについて考えました。

ケアとは?ケアを分解する
ケアとは、関心を向けることから始まり、
ケアニーズに気づき、配慮し、
ケアを与え、ケアを受け取り、応答すること。
さらにその先に、共にケアする関係があるといいます。
(参考:J.C.トロント『ケアリング・デモクラシーー市場、平等、正義』勁草書房 2024年、同『ケアするのは誰か』白澤社 2020年)
ケアとは、「気にかけて」「手にかけて」、
相手から何が生まれてくるのかを見守る行為でもあり、
そこには、人と人とが“相対する”という関係性が存在しているというお話がありました。
そして、その上で、参加者みんなで
「保育はサービスではないのはどうして?」という問いをめぐり、考えを出し合いました。

民主的なケアとは?
保育を“サービス”の範疇で考えると、
「人手が足りない」「子どものためばかりは考えられない」「他のクラスに合わせなきゃ」
といった発想に陥ってしまうかもしれません。
一方で、多くの保育理論では、””ケア”の視点に転換が可能であるとうたっており、
この視点に立つと、子どもの反応に自分の心が動き、
「面白い」「響いてくれる」「色々動いてきたぞ」といった感覚につながっていきます。
人と人とが“相対する”という関係性として見ていく中で、
ケアされる側にとっての民主主義だけではなく、
ケアする側の自由は守られているのか?差別や不公平がないか?考えました。

保育者にとって変換できないこと
保育者自身が努力や意識の転換だけでは変えられない現実もあります。
たとえば、報酬、社会的地位、人間関係、労働量、不平等な背景が自己責任に帰される、ワークライフバランスが悪いなど。
「休暇は他人事」「個人の事情は持ち込まないほうがいい」といった空気の中で、
自分の生活や感情を語ることが難しくなっている現状もあります。
それぞれの背景が、いつの間にか「自己責任」として扱われてしまうことも少なくありません。
私生活の話題って盛り上がるのはなぜだろう?という問いが投げかけられました。

ウェルビーイングとは
「ウェルビーイング」とは、 “幸福”や“心身ともに良い状態”を指し、一般論として「精神的」「身体的」「社会的」に良い状態(WHO)と定義されています。
秋山先生はこの言葉をもう一歩深く掘り下げ、
たとえ表面的には良い状態に見えても、
”自分に対する否定の気持ちが入っているかどうか”でも変わるのではないかというお話がありました。
ウェルビーイングとは「いい状態であること」そのものだけでなく、
“自分の尊厳が守られているかどうか”にも関わるのではないかと感じました。

経営者がこういう保育がいいと言っている間は正しくない。
経営側の都合だけではなく、保育士側の声も大切にされる必要があるという言葉が印象的でした。
また、サード・スペース(仕事について、生活について共有し、考え、探索できる時間と場所)の必要だというお話がありました。
そうした場があることで、保育者のウェルビーイングを大切にすることができるのではないか。
保育者のウェルビーイングを測る私たちにとっての指標が必要ではないか。
というお話に至りました。

最後に、秋山先生からの事前の問い「保育者をしていてもっとこうだったらいいのにと思うこと」に対する自分なりの考えをシェアしました。
保育者として、生活者として
何が不安?不満?気になる?もやもやする?楽しい?
さまざまな声が上がる中、ライフイベントって性別関係ある?ない?などの問いなど
多様な視点から語り合う時間となりました。
次回は、あがった声をもとに、
保育がしんどいのはどんなとき?というテーマでさらに深めていきます。
保育者だって人間ですから、いつも保育にやりがいがあるとは限りません。
しんどいことや矛盾など、話すことでどんな解決ができるのか、探してみましょう。
秋山ゼミが参加者の皆さんにとっての大切なサード・スペースとなっていくことを願っています。


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